近年、多くの企業が頭を悩ませているのが、非構造化データと呼ばれるデータの活用です。非構造化データとは、データベースのような決まった構造を持たないデータのことです。画像、音声、動画、メール、ソーシャルメディア、文書など様々な形式で存在します。
多くの企業は長年に渡り、膨大な量の非構造化データを蓄積してきました。しかし蓄積したデータの多くは有効活用されておらず、宝の持ち腐れ状態となっています。
非構造化データには、顧客の行動や市場の変化、製品の改善点など、経営に役立つ貴重な情報が隠されています。分析することで、より良い意思決定、業務効率の向上、製品?サービスの改善などが可能になるのです。
一方で非構造化データは、データ量が多い、種類がバラバラ、変化が速いといった課題を抱えています。そのため企業は、必要な情報を分析し、ビジネスに役立てることが難しいと感じているのです。
非構造化データは構造化データに比べ、データの質が低い場合もあります。分析前にデータのクリーニングや加工が必要となるケースも少なくありません。
非構造化データ管理の課題
非構造化データの管理に関して、企業は多くの課題に直面しています。データマネジメントの観点からも、向き合うべき課題と言えるでしょう。
非構造化データの活用に関する具体的な課題は、以下のとおりです。
サイロ化されたデータ
各部門やチームが独自にデータを収集し、異なるフォーマットやシステムで保存しているケースが一般的です。
サイロ化されたデータとは、組織内で異なる部門やシステム間で共有されず、孤立して保管されるデータのことを指します。本来は企業全体でデータを統合し、従業員が容易にアクセスできる環境を整備する必要があります。
データの品質
非構造化データは、分析前にクリーニングが必要な場合もあります。データの品質が低いと、分析結果が不正確になり、誤った意思決定につながる可能性があるのです。
データのコスト
組織内の非構造化データが増加するにつれ、ストレージコストも増加します。企業はデータ圧縮などの方法を用いて、ストレージ容量を効率的に利用する必要があります。
企業が非構造化データを管理すべき理由
企業は非構造化データを分析することで、顧客のニーズや行動をより深く理解できます。
例えば、顧客のソーシャルメディア投稿を分析することで、特定の製品について話す顧客の属性を特定し、効果的なマーケティングキャンペーンを展開できます。
他にも様々な理由が考えられます。
- 顧客満足度の向上:コンタクトセンターの音声記録を分析することで、顧客の不満や要望を把握し、サービス改善に役立てることができます。
- 生産性の向上:非構造化データを適切に管理することで、従業員が必要な情報に迅速にアクセスできるようになり、業務効率が向上します。
- コンプライアンスの強化:非構造化データを整理し、最新の状態に保つことで、企業は法令遵守を確実にできます。
- 競争優位性の獲得:非構造データを効果的に活用することで、企業は新たなビジネスチャンスを発見し、競争優位性を獲得できます。
ここからは、組織が非構造化データを管理するための5つの戦略を紹介します。
データを知る
非構造化データを効果的に管理するには、まず自社のデータを理解することが重要です。
具体的には、以下の項目を可視化する必要があります。
- データ量
- データの所有者
- アクセス権限
- データの古さ
- 保存場所
- データの種類
- 保存コスト
非構造化データは通常、データサイロと呼ばれる状態に存在します。各部門が独自に音声、ビデオ、文書、アプリケーションデータ、レポートなどを保存しているため、全体的な共有が難しい状況です。
企業がどのような非構造化データを持っているかを把握しなければ、適切な管理方法を検討することはできません(関連記事:データサイロ:その正体と対処法)
データのクリーニング
非構造化データを最大限に活用するためには、分析前にデータクリーニングが不可欠です。重複データ、信頼性の低いデータ、古いデータ、不正確なデータなどが混入していると、分析結果が歪められ誤った結果に繋がる可能性があります。
余計なデータは、必要なデータを見つける手間を増やし、分析効率を低下させます。
構造化されていないデータは、構造的なエラーや誤字脱字が含まれている場合もあり、分析ツールで処理できない可能性があるのです。
データのエンリッチ化
データエンリッチメントとは、組織が保有するデータに外部のサードパーティソースなど異なるソースからの追加データを組み合わせることで、データ分析の精度を向上させる手法です。
データのエンリッチ化によるメリットは、以下のとおりです。
- データポイントの増加:多くのデータポイントを獲得することで、分析結果の精度と信頼性を向上させることができます。
- 既存データの強化:既存のデータに新たな情報を付加することで、データの価値を高め、より深い分析が可能になります。
- 非構造化データの活用:非構造化データに構造を持たせることで、分析対象として活用できます。
- 情報に基づいた意思決定:より多くの情報に基づいた意思決定が可能になります。
データの整理とカタログ化
非構造化データは膨大な情報量を持つ一方で整理されていないため、必要な情報を見つけるのが困難です。非構造化データを活用するためには、データの整理とカタログ化が重要になります。
クラウドベースのコンテンツ管理システムは、非構造化データファイルの整理、カタログ化、保管を自動化し、ユーザーがデータにアクセスしたり検索するのをサポートするソリューションです。企業は非構造化データの管理に関して、この戦略を検討すべきと言えます。
標準に基づいたデータ管理ツールの使用
非構造化データの管理には、標準の仕様に基づいたツールを選択することが重要です。標準の仕様に基づいたツールは、特定のベンダーに依存することなく、異なるプラットフォーム間でのデータ移行を容易にします。
データプラットフォームやツールは常に進化していて、標準の仕様に基づいたツールを使用することで、将来の技術革新に対応しやすくなるのです。